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「……へぇ」
僕は黒い光沢を放つソファーに座りながら、小さく零した。
僕の視線にあるのは、色とりどりに輝く画面に映る人間。
人間と言う生き物は面白い事を考える。天災から身を守る為に家と言うモノを造ったり、空を飛ぶ為になんかスゴい費用と時間をかけて、ヘンなモノを造ったり。
何故、そんな事に時間を費やすのか理解出来ない僕にとっては、人間の観察はとても面白い。……まぁ、理解しようと思えば、簡単に理解出来るけど。
「平和だねー」
画面越しに無感情で呟いた。
人間が楽しそうに日常を過ごしている。でも、その人間が知らない所で犯罪が起きたって、その人間は気にも止めない。
関わりの無い事柄に感情移入する事は難しい事なんだろうけど。
「……んー、つまらないなぁ」
指をパチンと鳴らすと、画面は真っ暗になった。辺りはなにもない空間が広がる。
僕は眼を閉じた。なにをしているのかって?そんな事、決まってる。
「……幸福、世界征服、テロ、恋愛成就、出世……。うぇ、楽しくない願いばっかだ」
人間の願いに耳を傾けていたんだ。人間の数だけ、願い事はある。その数多くの願いから、面白い願い事を見つけて、叶えてあげるんだ。
「億万長者、長寿、永遠の美貌……呪殺って、物騒だなぁ」
呪い殺したいぐらい憎いなら、直接手を下した方が早いと思うんだけどなぁ。
それよりも、もっと変わった願いを持った人間は居ないのだろうか。全知全能とか不老不死とか切磋琢磨とか……あれ?最後だけおかしいような気がするけど……。
「……あ」
見つけた。変わった願いを持つ人間の存在。彼のような面白い願いを持つ人間の存在。
僕は力無く口角を上げ、ゆっくりと瞼を上げた。今、僕の赤い瞳が、暗闇で不気味に輝いているのが分かる。
「……じゃあ、叶えてあげなきゃ」
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