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そう、叩き付けられるハズだったのに、理解出来ない現象が起きていた。
いくら経っても訪れない衝撃に不安を感じ、恐る恐る眼を開けた。僕の下に広がっているのは、見慣れたコンクリートの床だ。だが、こうして見下ろしている間、僕と地面の距離が縮まっていない事に気付く。
訳が分からず、何度も瞬きを繰り返す。
「ど、どうなってるの?」
「やあ、初めまして!」
僕の上から声が降ってきた。驚いて、すぐさま振り返ると見知らぬ男性が居た。顔が影で隠れており、あまり見えないがニコニコと笑いかけているように見える。
「秀生くんで間違いないかな?」
男性は僕の名前を口にした。
僕は夢を見ているんだ、じゃないとこんな非現実的な事起きるハズない。
「いやいや、夢じゃないよ」
男性は僕の心を読んだかのようにクスクスと喉を鳴らした。悪戯を仕掛けて、引っかかった相手を嘲笑うような笑い方だ。
「ついでに言っとくけど、君は死んでないよ。僕が今、君の身体を掴んでるからね」
「え、と……はい?」
掴んでいると言われても、ここはなにもない場所だ。となると、彼は空中に浮いている事になる。
「……わー、僕……いよいよ頭まで、おかしくなっちゃったのかな……」
まぁ、自殺を考えた時点で僕の頭はおかしくなっていると思うが。でも、有り得ない。人が空を飛ぶなんて、無理な話だ。
「いまいち、リアクションが薄いなー。もう少し、驚いてくれたっていいんじゃないかな?」
拗ねてしまったのか、男性は苦笑いを浮かべた。
驚くって、そりゃあ驚いているよ。こんな出来事が起きるなんて、誰が想像していたと思うんだ。
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