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タオルで水気を拭き取りつつリビングに行くと、1人分のトーストがジャムやマーガリンと一緒にテーブルの上に置かれていた。他の2人はすでに朝食を済ませていたようで、お皿とコップが2組ずつ流し台に置かれていた。
少女にとってはこれが朝昼兼用の食事だ。
マーガリンとイチゴジャムを満遍なく塗ったトーストを焼き、テーブル席に落ち着く。
(……いただきます)と手を合わせて一口。
しかし、大好物であるはずのイチゴジャムにも頬が緩むことはなくなっている。
いや、イチゴジャムだけではない。
最近“おいしい”などというありきたりな言葉を口にすることもなくなったし、“甘い”“酸っぱい”などといった言葉も口にするどころか表情でさえ表現する回数が目に見えて減っている。
(……ごちそうさま)
食べ物を残すなど、粗末にするのはとてもいけないことだけれど、食欲が出ない。
両親が殺され、【学院島】のこの家に移ってきて、それからしばらくして今度は姉がいなくなった。
今は3人で暮らしているが、実質一人暮らしのような感じだ。2人との会話も、少しだけだが減ってしまっている。
(……お姉ちゃん どこにいるんだろ)
会って話がしたい。訊きたいことがある。
なぜ、家を出ていったのか。
なんで、何も言ってくれないのか。
どうして、あれから便りの1つも寄越してくれないのか。
探したい。
捜したい。
捜しに行きたいけれど、現状としては情報が少ない。かといって、あてもなく歩き回るのでは効率が悪いし、けれど自分の今の性格を考えると道行く人たちの目撃情報を当てにすることはできない。
2人が帰ってきたら今度こそ相談してみよう。
自分の中でそう予定を立てた少女は、再び自分の部屋に戻り、ヘッドホンを装着してからベッドに潜り込んだ。
──そんな毎日が続いている。
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