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さらに逃げるロディと、それを追うルミリエル。
「どうして逃げるのですか」
(そりゃ逃げるでしょ、怒った時のあんたは怖すぎるんだから。わたしじゃなくとも大半は逃げるって)
そう思いはしたが、ロディは当然言わなかった。言ってしまったら最後、本当に“ブラックルミリエル”が出現してしまいかねないから。
そんなロディの様子から何かを察したのかしていないのか、ロディに向けて手を伸ばすルミリエル。
「とにかく脱いでください」
「できるわけないでしょっ!?」
なによりも1人の女性として。
詰め寄られたのは、話し方の件ではなくどうやら服装の件だったみたいだが、もちろんこんな場所で観客一人の公開ストリップショーなどするつもりはさらさらない。
「でしたらせめてその帽子だけでも脱いでください!」
「そういう問題じゃないでしょ!?」と叫ぶ間もなく帽子を剥ぎ取られてしまい、その下からは紅髪を後ろで一つ結びにした頭の上に生えた獣耳が現れた。
この少女──ロドリュス=ヤイヴォックは猫人族、序列などという面倒なものがあるわけではないが下位に見られがちな獣人族の一種族だ。
それをひた隠し鍛錬に励むためにもらった帽子を被っていたのだが、どうやら新しい国主様はお気に召さないようだ。特に今みたいに2人きりの時にはいつも小言のように言われてしまう。それも込み込みですでに皆には知られているが。
「まったく……」と言いながら返された帽子を、ロディは被らず胸の前で抱えた。
「そもそも、リュミィに呼び出されたからこの格好で来たのに」
これは言い訳にすぎない。銀甲冑と帽子というファッションは、ロディにとってもはやデフォルトだ。
「とかなんとか言っていますけど、ロディの私服姿を見たのはお風呂上がりくらいです」
「……いや、どれだけ仕事大好きな猫人族なのさ、わたしは」
自分で言うのもなんだが、休日は私服だ。
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