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降りしきる雨の中で向かい合う、2人の男女。
頭の上には三角形の可愛らしい耳、そしてお尻のあたりからはこれまた可愛らしい尻尾が生えているが、2人の手にはそんな外見に不釣り合いなほど物騒な小銃が握られていた。
そして2人の間を分かつように、さらに2人の人物がいた。1人は体から血を流して横たわり、もう1人は獣人族の男に人質として捕らえられている。
只事でないことは誰が見ても明らかだが、ただ1人──その光景を遠くの物陰から覗き込むように見てしまった幼い少女には、残念ながらそれが何を意味しているのか分からなかった。
ふらふらと出ていってしまい、『隠れてなさい!』と自分に背を向けて立っている女性に怒鳴られて別の物陰へと隠れる。
それでも、さほど好奇心が旺盛というわけではないが気になってしまった少女は、やはり覗き込むように見てしまった。
雷で瞑ってしまい、その後で開けた目に、その光景をしっかりと。
倒れていた父親と、男に捕らわれていた母親が撃たれるところを。
赤色の液体が雨に混ざって溶け合うように流れていく。
撃ったのが誰かなど、幼い少女には判断できるはずもなかった。それよりも、両親が目の前で倒れる光景に瞬間的に息を呑んだ。
そして、
いやあああああぁぁぁぁぁ━━━━━!!
絶叫した。この世の終わりを目の当たりにしたかのように。自分でも驚くほどに、ただただ悲鳴を上げた。
──降りしきる雨にも負けず。
──吹きすさぶ風にも負けず。
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