デートをしようか

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伊織の手がピクリと反応し、視線がこちらに向けられる。 こんな時、何て声をかければいいのか見当もつかない自分が忌々しく感じる。 「…俺には、、暴走族のこととか、【朱雀】の掟とか、よくわからない。でも、俺が伊織の足手まといになる時が来たら、俺は…」 「駄目だ。」 俺が言う前に、伊織が鋭い声で遮った。 伊織は手に持っていたコーヒーカップを置くと、 「────!」 顔を近づけて俺の唇を塞いだ。 押し付けるようなキス。 コーヒーの味がする。 「───俺から離れるのは、許さない。」 唇を離し、伊織は静かにそう言った。 触れるか触れないかの距離で、伊織が喋ると吐息がかかり、それだけでドキドキする。 間近にある伊織の瞳には俺が映っているのが見える。 「お前を二度と手放さないと誓った。だから、何があっても俺の元から離れるのは許さない。」 「……っ」 嬉しすぎる宣言にも似た言葉に、目頭が熱くなるのを感じる。 漣とのことは、俺が伊織の恋人に なったが故に起きてしまったことだから、漣の話題になると俺が罪悪感を感じることを、伊織はわかっている。 だからこそ、普段は極力漣の話題を避けていたのだけど。
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