デートをしようか

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伊織の静かな、けれど力強さの感じられる“宣言”に、全身の血が一気に顔に集中するような感覚。 ……俺、今絶対顔赤い。 嬉しいけれど同時に恥ずかしくて、顔を俯かせた。 「……意外。」 頭上で響く十羅さんの低い声。 「お前のそんな顔、初めて見たわ。」 どうやら本当に驚いているらしく、彼の驚きがその口調から伝わってくる。 でも、彼が驚くのもわかる。 俺も伊織と関わりを持ち始めた当初は、伊織はポーカーフェイスだったから。 あの頃に比べたら、今の伊織は笑うのが増えた気がする。 「麗音の時以来だな。」 一瞬、時間が止まったような気がした。 十羅さんが口にした名前。 間違いなく、それが原因なのだけど。 「……かもしれねぇな。」 若干、温度が下がったような伊織の声に、俺はギュッと自分の服を握りしめた。
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