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「………み、雅臣。」
「………!?」
伊織に名前を呼ばれて、ハッとする。
静かになっていたと思ったら、いつの間にかどこかに到着していたみたいだ。
周りを見回すと、そこは知らない場所。
小さな山の麓らしく、そこから石段が長く続いている。
「ここ……?」
「ああ。前から、お前を連れてきたいと思ってた。」
伊織は静かにそう言ったけれど。
じゃあ、ここは一体どんな所なんだろうか…。
それを聞こうと伊織を見上げるも。
「それより、早く降りろ。じゃねぇと俺も降りられねぇ。」
「え?…あっ」
そこで漸く、俺が伊織の胴体に腕を回してガッチリ離さない状態だと気づいた。
だから伊織も、身動きが取れないでいる。
カッと顔が熱くなり、俺は慌てて伊織の身体を解放した。
「ごっ、ごめんっ…」
急いで降りて、ヘルメットを外す。
伊織はそんな俺を見てクスリと笑った。
「……俺は、嫌じゃねぇけどな。」
……俺の顔は、もう茹でダコ状態だと思う。
こうして伊織が俺に投げかける一つ一つが、俺には甘すぎて……
伊織はそんな俺を見て一層笑みを深めると、バイクを道の脇に停めると、俺の手を取った。
急に訪れた温度に、心臓がドキンと高鳴る。
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