2051人が本棚に入れています
本棚に追加
「……伊織とこうして出かけるの、初めてだね。」
それ以上追及するのは諦め、話題を変える。
俺がボソリと呟いた言葉に、伊織はゆっくりと俺の方に顔を向けた。
「そうか?」
「んー……まったくどこにも出かけなかったワケじゃないけど、こういう……デートっていうのは、初めてかな。」
改めてデートという単語を口にするのは気恥ずかしい。
伊織がそういうものに連れていってくれるとは思ってなかったし、俺も期待していたワケじゃなかった。
「恋人、だからな。…つっても、気に入るかは知らねぇが。」
そう言って伊織はまた前を向いた。
心なしか、握られた手に力が込められたような気がする。
最初のコメントを投稿しよう!