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「こんな所にも……神社があったんだね。」
神社から目を外せないまま、俺はそう呟いた。
日光東照宮のような、豪奢なものじゃない。
むしろその逆で、神社と呼ぶにはあまりにも荒廃している。
さっき上がってきた石段も、意識していなければ素通りしてしまいかねないほど目立たない入り口だった。
けれど………、石段を上りきったこの拓けた土地にひっそりと建つこの建物は、不思議な存在感を放っていた。
「ここは………俺が小っせぇ頃、よく遊んでた場所だ。」
伊織が言った。
「伊織が?」
「ああ。まだ俺が荒れてなくて、家族と仲良くやってた頃だな。」
家族…………
そういえば、伊織の家族って………
「伊織の………って……」
「俺の家族のことはどうでもいい。」
聞く前に、ピシャリと門前払い。
そんな伊織に、違和感を感じた。
けれど今そのことを追及しても、きっと伊織は答えてくれない。
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