邂逅

38/38
2047人が本棚に入れています
本棚に追加
/371ページ
窓のカーテンを閉めようと窓に近づくと、 「…!」 家の門の外に人影があるのが見えた。 家族が帰ってきたのかと思ったけれど、その人影は今立っている場所から動かない。 それによく見ると、家族じゃない。 知らない男だ。 男は窓から見下ろす俺に気づくと、薄く笑った。 その薄ら笑いに、服の中に氷を詰められたかのように全身が冷たくなる。 その人は他のどこでもない、2階の一部屋の窓の俺をまっすぐに見ていた。 眼球すら凍ったかのように、俺はその双眸から目をそらせない。 やがて男は身に纏うロングコートを翻すと、姿を消した。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!