由季

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「灯!分かったよ、佐藤光。6年4組だって」  教室に入るなり、おはようより先にその言葉を耳にした。 「おはよう。由季」 「おはよう」  由季はそう言ってニッコリと笑うと、席に着こうとする私にすり寄って来た。  そして、更に自分が掴んだ情報をしゃべり始める。 「今ねぇ、6年生の間では凄い人気らしいよ。サッカーがメチャメチャ上手いんだって」 「へぇ……」  私、そう言いながらランドセルを肩から下ろして机の上に置く。 「カッコイイんだって」  由季が耳元で囁く。 「ふうん……」  わざと興味なさ気に相槌だけを打つ。 が、気になる、気になる、気になる……。  そして耳だけは、どんどんダンボになってゆく。
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