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女性は知らなかった。
その時に幾つも採卵されていたことに……
それらは
《ドールハウス》
の実験材料となり、何体もの交代複製人間が出来上がったのだった。
それが俺達だったのだ。
「退院おめでとうございます」
何処かで会った覚えがある女性が言う。
それが誰なのか解らず、俺はモヤモヤした頭を抱えていた。
「ありがとう。全て君達のお陰だよ」
でもそう言ったのは俺ではない。
俺はソイツの隣に座っているだけのお飾り的な存在だったのだ。
「今回はこの方から移植させていただきました」
「いやー、本当にありがとう。息子だけではなく、まさか私にも恩恵があるなんて思いもよらなかったから、感激したよ」
そう言いながら、目の前のテーブルでグラスにワインを注ぐ。
「ありがとう。君達のお陰だよ。本当に、今まで苦しんでいたのが嘘のようだ」
ソイツは泣いていた。
「このドールハウスが無かったら今頃……」
感極まった声が俺の耳にも届く。
よっぽど嬉しいのだろう。
お役に立てて俺も嬉しいよ。
俺は心にもないことを言っていた。
俺は今、等身大のフィギュアだ。
でも遂数日前までは普通に生きていたんだ。
そう……
全てはドールハウスの陰謀の中で……
代理母と言う、人間製造機の中で……
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