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「退院おめでとうございます」
目の前のテーブルでワイングラスが重なる。
「ありがとう。君達のお陰だよ。本当に、今まで苦しんでいたのが嘘のようだ」
ソイツは泣いていた。
「このドールハウスが無かったら今頃……」
よっぽど嬉しいのだろう。
又同じこと言っている。
「全て、私どものサービスの一貫ですわ」
「全て御両親のお陰ですね。感謝して差し上げてくださいませね」
「そうだな。両親が莫大な財産で此処を造ってくれたからだな」
「私どもはただ、破棄されるはずの受精卵を譲り受け、有効利用しただけです。あれでES細胞を作り出すだけでは勿体無いでしょう?」
「ああ、さっき見せてもらった代理母だね?」
「貴方様のご子息やご家族な何かあった時に役に立つようにしてありますので」
「今回は心臓だったね。この男性の残った部位は?」
「それも有効活用しております。ドナーとなって、他の方の中で生かされてもおりますからご安心くださいませ」
それは俺が等身大のフィギュアとなった経緯だった。
今、目の前で重なったワイングラスが口元に運ばれる。
そして……
手元から滑り落ちた。
夾竹桃には青酸カリの何倍もの毒素が含まれているんだよ。
俺の意識は多分、あの
《ドールハウス》
の前から始まったんだ。
だから夾竹桃を用意することが出来たのだ。
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