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「俺、もー包むとか隠すとか、育てるとか植えるとか、疲れた!
オブラートもヅラも、俺にはいらん!
俺は自由だーっ!!」
もはやネタ化しているのか、流暢な語り口と、高らかな拳で場が一気に湧く。
俺の到着のためにもう一度乾杯の音頭がとられ、照れ臭くも久しぶりの再会に心が沸いていた。
「ほんっと、久しぶりだなぁ。
8、9年ぶり?」
「卒業以来かな」
いじったのがきっかけで、隣を空けてくれた佐伯とグラスを打ちつけた。
佐伯とは三年間クラスも同じで出席番号も前後だったから、もはや腐れ縁だった。
「こっちにはよく戻ってんの?」
「全然。土日も部活だし遠征も多いからね」
「あー冴島、教師だっけ?
相変わらずバスケットやってんだ」
「ご名答」
ぐい、と流し込んだビールが渇いていた喉を潤し、きゅうっと刺激が鳴る。
決して大きくはないこの町を、大学の進学とともに出た。
仕事の忙しさにかまけて、なかなか実家に帰らない俺を、姉の樹(いつき)は親不孝者の極悪非道と、ののしる。
「今回はなんで?わざわざこのために帰ってきたのか?」
「んー、まぁーいろいろ」
瞬時に脳裏にむうっ、と頬を膨らませていたカオルが浮かぶ。
ふは、と思わず笑みが漏れた。
「なんだよ、気持ちわりーなぁ。
なんかいいことでもあんの?」
たこわさをつつきながら、佐伯がニヤリと意味ありげに俺を見る。
「別に。お前こそ、ナニ。
そのヤラシー顔」
「いやいやー?誰かさんに会えるから嬉しいのかと思ってさー」
「はぁ?」
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