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「そーなのよぉー、みんなにわっしょいされてオーディション受かって、目指せパリコレ!!なんて言ってたまでは良かったんだけどさぁ」
「おい、それ俺のだぞっ!」
はぁーと盛大にため息をついて佐伯のグラスを奪うと、きつめの冷酒を一気に含み、喉を通過させた。
そして。
頬を赤らめながら、にっこり笑った。
「卒業直前にプロポーズされちゃったのっ!
ダァーリンにっ」
キャーキャーと、奇声に近い歓喜の声をあげて、一段と激しくクネクネしながら溶けている。
「早い話が、デキ婚だ」
耳元でそ、っと佐伯が囁きなるほど、と頷く。
「本当は私、中絶しようと思ってたのよおー。
だってモデルになれるチャンスなんて、二度とないもの。
だけど………」
再び染まる頬。
何かを噛みしめるように微笑む。
「あの時泣きながら私を引き留めてくれてたダァーリンに、感謝してる。
じゃなきゃ、子どもたちにも逢えなかったんだし、今のこの幸せがないなんて、考えられない!」
そう破顔すると、小さな小瓶できていた佐伯の冷酒の蓋を外すと、そのまま口つけた。
「あの畑山が、今や年子で男5人の肝っ玉母ちゃんだ」
開いた口がふさがらない俺に、佐伯が哀愁を込めて肩を叩いた。
5人………男………。
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