第1章

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「なーにいってんのぉ、佐伯君、 まだまだこれから! 私女の子生まれるまで頑張るのっ!」   完全に俺たちの年代を超越した経験豊富っぷりを醸し出しながら、自分で自分の弾けんばかりの胸を寄せて8の字に揉んでみせるが、もはや苦笑しかない。 「よかったな、いい旦那さんみたいで」 返す言葉に困りながら無難に答えたつもりが。 「は!?冴島君、本当になにも知らないのね」 「こいつ、鋭いようで温室育ちだからな。 噂になってたことすら知らないと思うぞ」 俺を間に挟みながら、佐伯と畑山が顔を見合わせ盛大にため息をこぼす。 そんな俺に視線を戻した佐伯が、親指で畑山を指すと。 「畑山の旦那、ポチャ井だ」 ポチャ……… 「ポチャ井!?」 少しの間を置いて、脳に再生されるポチャ井………古典の細井先生。 思わずグラスを倒しそうになる。 名前は『細い』のに、力士並に豊満な肉体で、身長も大きくなかった。 決してイケメンの部類ではないし、いつもニコニコして雑用ばかりこなしている先生というイメージしかない。 その風貌のせいで、生徒の中ではポチャ井で通っていたし、本人もそれを知っていて楽しんでいた。
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