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驚きを隠せない俺に、畑山が「でも、」と続けた。
「『いい旦那さん』って、言ってくれたのはありがとう。
私の中では最高のヒトなんだけど、この町は狭すぎるから………。
なかなか大変だったのよぉー、最初は!」
少し、憂うその顔にズキリ、胸が悲鳴を上げた。
────そうか。
中年高校教師が町一番の美人生徒に手を出した。
遠い芸能人の「らしい」話より、断然盛り上がるに決まっている。
ふ、と脳裏に浮かぶ綿飴みたいなカオルの笑顔。
優しく包んであげたいと思うのに。
力を込めれば込めるほど、甘くふわり、溶けてしまう。
俺は…………。
「暗い」
「え?」
「冴島君やーだーぁー。
暗いわよぉー。
なんであなたがそんなに落ち込むのー」
畑山が、フルスイングで俺の肩を叩く。
「いてーよ、マジで」
考えごとしていたせいだろう。
真顔になった俺が落ち込んだと思ったのか、重めの平手打ちに顔がゆがむ。
「冴島は優しいんだよ、無口で無愛想でイケメンだけど」
「そうね、確かに無口で無愛想で背が高くてイケメンだわ」
「なんだそれ。褒めてないし」
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