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「えー、冴島君モテてたわよー。
私何人か知ってるもん」
「だろー!?ムカつくよなぁ。
こうやって、飄々としてるやつが一番ムカつく!」
もはや言いがかりでしかない、くだを巻いた佐伯にハイハイと適当に返す。
「でも、まぁ冴島君、水野さんいたからみんな諦めてたけどね」
水野…………懐かしい名前に、胸が小さな痛みとともに少し、跳ねた。
「お似合いだったのに、別れたんでしょ?」
「いつの話だよ」
ぐい、と顔を寄せてのぞき込む畑山に本気で眉間にしわを寄せて苦々しく笑う。
「今日水野さんも遅れてくるはずなんだけど……。まだみたいねぇ」
ピクリと、指が跳ねる。
「水野、来るの?」
「あれ?知らなかった?
水野さんもクラス会初めて来るのよ。
だから私、てっきり冴島君と打ち合わせてるのかと……」
「まさか。連絡先も知らない」
水野が、来る。
同じクラスだったんだから、いるかもしれないとは思っていた。
だけど事前によく来るメンバーに名前がなかったし、実際その顔がなかったことに少しほっとしたのも事実だった。
不意に、扉が遠慮がちにスライドされて全員の視線が注がれる。
「美鈴!」
「うっわ、水野!?超久しぶり!!」
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