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「クレヨンー」
小学校低学年の頃からそう呼ばれてきた。幼稚園児にでもしているかのような当時の担任の質問のせいで。
端の机から順に答えていくクラスメイト達の単純な答えを聞きながら、幼い私は顔を伏せた。
元々、引っ込み思案で思った事を素直に言えず、周りの行動を見てばかりの私は、その単純な答えを導きだすのにも顔が真っ赤になるほど悩んでしまう。
「どんな色が好き?」
担任の真っ赤な唇を見ないように、あげた顔をすぐさま伏せる。みんなが赤とかピンクとか、緑に青に黄色にと答えていくカラフルな声が耳に入らないように。
私は……私の好きな色は。
…………黒。真っ黒が、すき。
でもそんな事を言ったらみんなになんて思われる?
ネクラな奴だって、暗い奴だって言われるよね。だから私もみんなみたく、赤とか青とか答えなきゃ。
「あやさん?」
みんなと同じように答えれば、大丈夫。たとえそれが嘘でも。
遠くに聞こえた先生の声に私はギクシャクと椅子を引き、立ち上がった。
いまだに悩む渇いた口から……か細くはっきりと、嘘でも本当でもない答えが押し出される。
「く……く、れよん」
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