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それからもう10年も経とうとしていて、私は高校生になっていた。
10年って長いはずなのに今でも私を"クレヨン"と呼ぶ声が聞こえるのは、ここが田舎で小学校から高校まで多少学区が変わったとしても、顔ぶれがほとんど変わらないからだろう。
私の引っ込み思案にも磨きがかかって、憎きあだ名のせいもあり、友達?ナニソレ状態。
「クレヨンってば!!聞いてんの!?」
もうすぐ夏だというのに、長い髪をクルクルに巻いて肩から垂らす女子生徒に「暑くないの?」と問いたいけど、口は開かない。
視線だけ上向かせて、読みかけの小説にしおりを挟んで閉じた。それを見て彼女は私が話を聞く気になったんだと思ったらしく、ピンク色のうるうる唇をにやりと歪ませる。
私としては、またですか?とうんざりな気持ちを込めたつもりだったんだけど、伝わらなかったらしい。いつもの事だけど。
私は口紅が嫌い。無色無香料のリップクリームなら使うけど。唇を装飾してなんの意味があるの?ましてやキスなんて意味不明。いや、関係ないけど。
「暑いから、ジュース買ってきて。オゴリで」
髪を切れ。剃ってしまえ。見てる方が暑苦しい。
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