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家に帰って宿題をしてご飯も済ませてシャワーもしてベッドに横たわっても、暑さのせいか睡魔が来ない。
やっと来ても目を伏せたくなるような悪夢しか見ない。
夢なんて見たくない。……ううん、夢くらい楽しい夢がみたい。
そう思いながら枕をギュッと抱いたら、あの日一人の男の子が「黒です」と答えたのを思い出した。私の後だったから誰も覚えていないだろうけど。
素直に好きなものを好きと言えるのが羨ましく思ったし、尊敬もしたけど、一番心に染み付いたのは……ズルイ、だった。
私が答えたら、メチャクチャに言われていたはず。でも彼はスルーされた。
あぁ、先生は「大人な色ね」とか言ってたっけ?私には笑いながら「全部の色かしら」とか言ったのに。
枕から顔をあげる。なんだかむしゃくしゃしてきてさっきまで抱きしめていた枕を肩越しに振りかぶる。
黒と答えた彼は、いつの間にかいなくなっていた。消えたいのは私の方だったのに。
部屋のドアに枕をぶつけるくらい、たいした事ない。ちょっと物音がするだけ、大丈夫そんなに強く投げないもん。
一瞬のためらいのあと……ブンッ、という音が耳をかすった。
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