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形を歪ませながらぶっ飛んだ枕は、焦茶の木製ドアにバシッと……ぶつからず、単色な少年にガシッと掴まれて捕らわれた。
「なかなかのスピードじゃん。枕投げって一人でやって楽しいの?」
そんな問いかけをしながら、ベッドの定位置に枕がポスッと置かれる。
「誰」
「こんな夜中に眠ってないなんて不健康だよね」
「誰?」
「ちょっとイイ夢見せてあげようか」
「……誰」
質問に答えない不審者は、スルリと私の隣に座ってニッコリ笑った。
「……イイ夢ってなに」
「見てからのお楽しみ」
仕方なく質問を変えると、スイッと握った右手を差し出し小指を立てた。
「指切り。イイ夢見れる魔法をかけてあげる」
なにそれ。ていうかこの人誰?なんで私の部屋にいるの。普通にベッドに座ってニコニコして、なに言ってんの?
「あ、その代わり、君の夢は僕が美味しく頂くから、よろしく了解してね」
「は?」
ほらほらと小指が急かすように近付いてくる。
混乱する私の頭は、でも何故かちょっとだけ"イイ夢"が気になっていた。
おずおずと絡ませる小指。
とたんに意識が遠くなる。
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