1 スリーハンドレッド・スプラッタ

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 マーニャは言う。 「二人とも、お強い剣士だそうですわね」 「当然だ」 「ああ」  ウキウ様とクライアは答える。 「二人のうち、どちらがより強いのでしょうか?」  シザメがピクリと反応した。場が荒れるのを警戒しているのだ。ウキウ様は、もちろん自分が最強だと言い張るだろう。だが、クライアが黙って譲ってくれるとも思えない。  しかも、マーニャはクライアの方に熱い視線を送っている。今度はウキウ様の味方がいない。これは荒れる。大荒れだ。私としては、間に挟まれるシザメが哀れでならない。  クライアは己を誇るように言う。 「俺はラスガの道を越えた剣士だ」  ラスガの道とは……なんかそういう名前の道があるらしい。剣士なら誰でも知っている道だそうだが、私は剣士でないので、詳しくは知らない。 「素敵ですわ」  マーニャは、たぶんラスガの道については知らないようだが、何か凄い事だと理解したらしい。うっとりした表情でクライアの腕に手を伸ばす。  いちゃいちゃと。見せ付けるように。  一方、ウキウ様は最強の剣士であるはずなのに、ラスガの道を知らなかった。 「俺はラスガだかアスガだかの事は知らん。俺が知っているのは、俺こそが世界最強の剣士である事、それだけだ。比較の意味なんかない」  マーニャとクライアは顔を見合わせ、微妙な表情になる。 「えーと、勇ましい事は、悪い事ではありませんわ。もしもの時には、きっとその強さを見せてくれる事でしょう」 「そうとも。頑張ってくれたまえ」  歯に衣着せたような物言いに、ウキウ様はおもしろくなさそうだ。 「ぬぅ。こいつらも俺の実力を認めないというのか。かくなるうえは……」 「やめてくださいね」  シザメに釘を刺され、ウキウ様は凶行を思いとどまった。  その時、ラッパの鳴る音が響いた。
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