11人が本棚に入れています
本棚に追加
マーニャは言う。
「二人とも、お強い剣士だそうですわね」
「当然だ」
「ああ」
ウキウ様とクライアは答える。
「二人のうち、どちらがより強いのでしょうか?」
シザメがピクリと反応した。場が荒れるのを警戒しているのだ。ウキウ様は、もちろん自分が最強だと言い張るだろう。だが、クライアが黙って譲ってくれるとも思えない。
しかも、マーニャはクライアの方に熱い視線を送っている。今度はウキウ様の味方がいない。これは荒れる。大荒れだ。私としては、間に挟まれるシザメが哀れでならない。
クライアは己を誇るように言う。
「俺はラスガの道を越えた剣士だ」
ラスガの道とは……なんかそういう名前の道があるらしい。剣士なら誰でも知っている道だそうだが、私は剣士でないので、詳しくは知らない。
「素敵ですわ」
マーニャは、たぶんラスガの道については知らないようだが、何か凄い事だと理解したらしい。うっとりした表情でクライアの腕に手を伸ばす。
いちゃいちゃと。見せ付けるように。
一方、ウキウ様は最強の剣士であるはずなのに、ラスガの道を知らなかった。
「俺はラスガだかアスガだかの事は知らん。俺が知っているのは、俺こそが世界最強の剣士である事、それだけだ。比較の意味なんかない」
マーニャとクライアは顔を見合わせ、微妙な表情になる。
「えーと、勇ましい事は、悪い事ではありませんわ。もしもの時には、きっとその強さを見せてくれる事でしょう」
「そうとも。頑張ってくれたまえ」
歯に衣着せたような物言いに、ウキウ様はおもしろくなさそうだ。
「ぬぅ。こいつらも俺の実力を認めないというのか。かくなるうえは……」
「やめてくださいね」
シザメに釘を刺され、ウキウ様は凶行を思いとどまった。
その時、ラッパの鳴る音が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!