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この国で、王都の次に発展している都市はバルザールだ。
バルザールは、西方地域の多くの都市とやりとりをしている商業都市で、多くの珍しい品々が流れ込んでくる。活気があり、人口も多い。
高いポテンシャルを持つ二つの都市の間には街道が整備され、常に物資が行き交い、賑わっている。街道は警備が行き届き、治安も良く、女子どもであっても安全に旅ができる。……などと語る奴は、たぶん山賊の仲間だ。
絶対に騙されてはいけない。
もちろん無自覚なまま他人を騙す者も同罪だ。許すまじ。
(その意味では、私もちょっと許されない事を現在進行形でやっているのかも知れない。読者諸君らは、嘘を見抜く力を育みながらこの物語を読んで欲しい)
普通に考えれば、全長数十キロとも数百キロとも言われる広大なエリアを完全に制圧し、治安を維持し続ける事など不可能だし、実際、山賊が活動する隙間などいくらでもある。
もちろん山賊にとっても楽な仕事ではない。相手はみんな警戒しているし、兵士が見回りをしている事もある。だから少しでも獲物を増やすために、街道が安全だなどと嘘をつく輩まで現れる。そして油断した者が襲われる。
山賊に襲われた者の末路は悲惨である。
持ち物を奪われ、捕まった者は奴隷商人に売られる。男はどこかの鉱山へ、若い女は娼館へ。奴隷商人が買い取りそうにない者はだいたいその場で殺されてしまう。
奴隷商人は違法の存在だが、事実上黙認されているのだ。
そのような悲劇を避けるべく、馬車隊は護衛を雇う事になる。
その時、ウキウ様は、王都からバルザールへと向かう馬車に乗り込んでいた。
モダウという名の商人に馬車隊の護衛として雇われたのだ。
十数台の馬車は、あまり平らでない道を、歩くほどの速さでノロノロと走る。
昼は一日中進み続け、昼食も馬車の上で取る。夜は街道の一角の広場にテントを張って休む。そんな事を繰り返しながら何日もかけて進んでいくのだ。
バルザールにたどり着くまでには、十日ほど掛かる。
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