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それは王都を出てから七日目の夜の事だった。
いつものように、街道の端にある空き地に馬車隊は止まる。
商人モダウは、てきぱきとテントを張っていく部下達を眺めながら首を傾げる。
「おかしいですね。なんか、今日は他の商人がいませんよ」
「そうだな」
ウキウ様は満足げに頷く。全てが計画通りに進んでいるからだ。
「まあ、土地を広く使えるから悪い事じゃないですけどね」
モダウはあまり深く考えずに納得する。偶然こうなっただけだと思っているようだ。気楽な奴である。
ウキウ様は大きく伸びをすると、言った。
「さてと、ちょっと王女様のご機嫌とって来るか」
「あはは。ご迷惑おかけしますねぇ」
モダウは苦笑する。娘の件では苦労しているようだ。
ウキウ様は、馬車隊の中央に止められている、他よりも一回り大きい馬車の荷台にあがった。
そこには、美しい少女がいた。
少女が着るのは色取り取りのレース布で作られたカラフルなドレス。胸元が大きく開いていて、豊満な胸を隠すどころか見せびらかしている。
髪は黄金のように輝く金髪。瞳はアクアマリンのように透き通った碧眼。肌はミルクのように甘い白。
貴族の宝石箱から迷い出てきたような、美しい少女だった。
その名はマーニャ。
マーニャは今、敷物の上に座って、すらりと長い足を伸ばしていた。その足をシザメがせっせとマッサージしている。
こうしていると、露骨な上下関係が発生しているように見えた。もちろん、マーニャが上でシザメが下だ。胸のサイズだけが人間のポジションを決めるわけではないが。
「おいシザメ、そんな事はやらなくていい。契約にないからな」
ウキウ様が言う。シザメが何か言い返す前に、マーニャが冷たい視線を投げかける。
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