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翌朝、既にこの話題は街中に広まっており――否定的な意味で――人々の嘲笑を買った老紳士は外へ出歩く事さえ困難になった。
粋な泥棒は最早この街を彩る役者の一員と化しており、人々は今回の件も"常識的"に考えて彼の起こした事件だと疑いもしなかった。
だからこそこの街に老紳士の話を聞き入れる者は誰もいなかった。記事を書いた新聞社さえ、粋な泥棒の正体を掴もうと走り回り老紳士と取り合うことさえしない。
結果的に老紳士が知る真実が嘘へ、人々が信じる嘘が真実へ変わろうとしていた。
そんな折、新聞社宛に一通の手紙が届く。
『明晩発刊の夜刊新聞 頂戴致します』
――粋な泥棒からである。
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