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「なんとなく分かるんだ…どんどんこの体から力が抜けていってる…」 「なっ……嘘…だろ…?」 「だからね、今度は……私に、言わせて。」 酷い焦燥感に駆られてミチルへと踏み出した俺を制止する様に、ミチルは一歩、後ろへ下がる。 「私、キョウスケのこと、大好き“だった”よ。」 「ミチ、ル…」 「美味しいものは大好き…これは否定しないけど。 …ほんとに美味しく感じられるのは、いつだってキョウスケが居てくれたから。 キョウスケ、ほんとにありがとう。」 「待てよ…ミチル…」 「最後に、言えて…良かった。 だけどね、私はもう居なくなっちゃうから……キョウスケを置いて行っちゃうけど…」 「だから、待てって、言ってる…だろ…!」 「…情けない事に…私は、『忘れて』なんて言えない───」 そう言って、この状況で初めてミチルは俺との距離を詰め、 「だから、記憶の片隅に、居させてね…? これ、私のさいごの、お願い。」 「ミチル…」 俺の胸元にその手を置き、そっと、唇を押し当てていた。 「…このわがまま、許してください。」 「い、いやだ…! ミチル…」 その唇の感触が冷たくて、俺は崩れ落ちそうになる膝に力を入れ、一歩遠ざかる彼女に手を伸ばす。 「さようなら。 キョウスケ、愛して───」 彼女の姿は月の照らす空間以上の光を放って、まるで蛍が一斉に飛び立った瞬間の様な 「いく、な…」 幻想的で、しかしひどく儚い光の粒子へと変わり、彼女は夜の闇に散って逝った。
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