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瞬きをひとつ。 白い、天井。 ただし、その視界には私を覗き込む幾つもの顔、顔、顔。 マスクをした彼らが慌ただしく動き出し、一部は外へ…そして父と母は何やら私に呼びかけている。 聞こえない。 まだ“この体”の意識が覚醒していないのか、それとも事故によって聴覚を失ってしまったか。 けれど、二人がどんな事を言ってるかくらいは大体想像がつく。 だって、こんなに…優しい顔をしてるんだもの。 なんだか安心してしまって、重い瞼を再び落としていく。 息をしてる。 それだけ理解して、私はもう一度だけ夢の世界へと旅に出る事にした。 今度は、すぐ目覚めるのだろうか。 でも、あんなに“良い夢”を見られたのだから、少しくらい長く眠ってしまいたいと、思ってしまうところではあるのだけれど。 「───ちる! …ミチル!!」 「……ん…?」 私の名を呼ぶ声に気付き、意識がゆっくりと覚醒していく。 どれほど眠ったろうか。 ああ、それにしても聴覚を失わなかったんだ…少し、嬉しい。 だって、目を開けた先で私の名を呼ぶこの声は、この顔は─── 「キョウ、スケ…」 「よかった…! ミチル、よかった…ッ」 あの“夢”とは違う、ほんとに嬉しそうな泣き顔を私に見せてくれる、私の大切な幼馴染。 「…ってか、お前……もしかしてこれがドッキリかよ?」 「……?」 「あれは消えたフリでした!ってか? …ほんと、心臓に悪いぞ、お前…」 あれって… あれって、夢じゃないの? 「まさか、あの最後の言葉もドッキリでした……なんてない、よな…?」 思い出して、熱くなる頬を隠そうと白い布団を手繰り寄せ───る力なんてある筈もなく、私はただただ目を逸らす事しかできなかった。
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