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それから何故一人なのか、と問うてみれば返ってきた答えは単純で、
『大勢の人に霊体を視認させると混乱が起きて、世界にとって良くない事が起きる』
らしい。
まぁ、二度と誰とも会えないし話せないと思っていたのだから、やはり最期はアイツ───
「じゃあ、一人になるところを狙おうね。」
にこやかなキュー太に私は頷いてみせ、暫く彼らの様子を伺った。
暫く経ち、手術中のランプが消えて集中治療室の扉が開く。
「手術は成功……後はご息女の体力次第ですが、今夜もつかどうか…現状は厳しいです。 …ご両親には最悪の結果も覚悟して頂きたい。」
「は、はい…」
皆が一瞬目に光を取り戻したものの、続く医者の言葉によって絶望が色濃く残された……その時。
「少し、風にあたってきます。」
キョウスケがベンチから立ち上がり、私の父と母に一言残して徐に歩き出した。
「チャンスだね。」
「…。 うん。」
キュー太は私の返事を聞くや否や、離れていくキョウスケの後を追おうとふよふよ動き出したけれど、留まったままの私に気付いて振り返る。
「いかないの?」
「その…」
父と母を見て、言い淀む。
だって、いつも笑ってたあのお母さんが、医者の言葉を聞いてからずっと泣き続けているし、お父さんはそれを慰めながらも固く唇を噛み締めていたのだから。
そんな二人を差し置いて、何でも無いような顔でしれっと何処かへ行くキョウスケを追うのか、なんて思ったら、何だか……とても罪深い事をしている気がした。
「あ、あんな奴…あんな薄情な奴なんて……もう、いい。」
なんて、こんなの強がりだ。
キュー太には心が読めるんだから、バレバレなのはわかってるけれど。
気に病んで欲しくない…とは思うけれど、やっぱり少しくらい悲しんでくれたって良いのにな…と、そう思う私って実は酷い女かな?
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