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あったかい。
できればずっとこうして居たい…ずっと、キョウスケと、二人で。
でも、
「…ごめん、離して?」
「ぁ……ああ、悪い。」
キョウスケは私の言葉に素直に従って離れ、少し照れ臭そうに頬を掻いた。
「その………いや、だったか…?」
「ううん。 期間限定のスィーツ奢ってくれた時より、うれしい。」
正直、自分で言ってて妙な例えだとは思うけれど、これが私にとって精一杯の感想だ。
「スィーツより、か。 …中々だな。」
どれほどのものかは流石に伝わるらしく、彼は茶色がかった髪を風に揺らしながら、ニマニマと笑っていた。
が、不意に真顔に戻ったかと思えば、
「っていうか、何だこれ? マジでドッキリなのか?」
私が告げるべき言葉を選ぶのも待たず、いきなり本題へと踏み込んできた。
「…それは…」
こんな時、私は何て言えば良いんだろう。
高々十七年と少ししか生きてない小娘には難しすぎる…あ、もう死んでるんだっけ。 っていうか、何年生きたって、こんな状況経験するはずもないけど。 死なない限りは。
「あのね、今の私、幽霊なの。」
と、迷っても仕方ないので、単刀直入にいく事にした。
だって“この時間”が後どれだけ続くか分からないんだから───そう、もしかしたら一分先、はたまた十秒先には、再び話せなくなるかもしれないんだし。
ただ、
「いや、お前…普通に見えるし、触れるだろ。 悪い冗談は…」
端的過ぎて、こうして信じてもらえない状況になるのも分かっていたけどね。
「ほんとだって。 …ほら。」
だからこそ、私はすぐさま答えとなる様に一旦宙に浮いて見せ、今度は足を床に沈めてみた。
「ね? 幽霊、なの。」
「ッ……そう、か。」
紛れもない事実だし、元より分かってた事だけど、証明して見せる度に少しだけ泣きそうになる。
…もう変わらない現実を、私自身にも、大好きな幼馴染にも…突き付けているんだから。
「…。 時間がないから、聞いて?」
だけど、溢れそうになる涙を堪えつつ、私は精一杯笑って見せた。
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