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ゴクリと男が息を呑む。
「右側は“未来”の暗示……“タワー”です」
「い、意味は?」
僕は災厄を現す事を告げた。
「雄二さんの悩み事は、大変深刻です。最悪な事が起きる暗示です」
「“最悪な”……」
男の顔が青ざめた。
「雄二さん……その最悪な事を打開する方法を見てみましょう」
僕は男の蒼白な顔を見て、ちょっと可哀相になり、カードを“スター”にでも変えようかと迷った。
「あの……大丈夫です」
男の言葉で僕はカードを変えるのを止めた。
「雄二さん……打開策は、“ハングドマン”です」
「はあ……そうですか」
男はうなだれた。
「“打つ手なし”……ですか」
男が苦しげに呟く。
「雄二さん……残念な結果ですが、そのようです。雄二さんのその悩み事は大変深刻な事態を迎えているようですね……僕から言える事は、“手を引く”或いは“諦めるように”としか言えませんね」
僕は勝手に、男の悩み事を離婚だと決め付けて言葉を伝えた。
“離婚しても多額の慰謝料を請求されますよ。我慢して下さいね”
そういう意味を込めて男に伝えた。
「ありがとう……ございます。龍也さん……その言葉、色が無いことが救いです」
「雄二さん……」
何故か僕は、男の手を握っていた。
「あ、6千円でしたね」
男はポケットからクシャクシャの紙幣を出して、頭を何度も下げながら、ブースを出て行った。
男を見送ると、僕はタバコに火を付けた。
僕は男が置いていった名刺、「占い師龍」の文字を見た。
「本名の龍也なんてどこにも書いてないんだけどな」
それに、“ハングドマン”の意味を知っていた。というより、僕の考えを読んだのだろう。
おまけに、“その言葉に色が無いのが救いです”か。
言葉に色が見えるのは、僕だけじゃなかった。
そう理解した僕は、占い師廃業を決めた。
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