第1章

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また今日も、 嘘を吐いてしまった。 赤い赤い嘘。 そう、血のように赤い「真っ赤な嘘」だ。 「……加奈ちゃん、来年には新しい恋が始まっていますよ」 「えー、ホント?」 「はい、本当です……ほら、カードが暗示しているのは……」 僕は、占いを仕事にしている。 「あれ?“ラバーズ”が逆位置ですけど」 「はは……これはね、“実現する未来”を現すんです。……由梨ちゃん、タロットに詳しいね。でも、僕は正統派とは違う方法を勉強しててね」 「ふーん……」 嘘だ。 僕は、タロットなんて、 占いなんて、 “出来ない”んだ。 「来年の……水着になる季節には、別れた元カレ以上の恋人が、出来るよ」 目の前に赤いレースカーテンが降りたような感じがする。 「良かったね、加奈。来年には恋人出来るって」 「うん……ありがとう由梨」 僕の占いブースにやってきたOL2人組。 “失恋した友人、加奈に、いつ新しい恋人ができる”かを占ってもらいにきた彼女たちは、相談料30分6千円を払って出て行った。 失恋した加奈ちゃんより、付き添いで来た由梨ちゃんの方が喋っていた。 まあ、女子2人組だとだいたいそんなものだ。 2人して延々と喋られるかより、まだいい。 「てか、あの占い師ヤバくない?」 これ見よがしに声が聞こえる。 マズい。 嘘がバレたか? 由梨って子、タロットに詳しかったしな。 「うん……カッコイイ……かも」 「でしょでしょ?みんなあの占い師ヤバいって……」 声が離れていく。 僕はホッとして、そしてにやけた。 立ち去る2人の言葉に、“色は付いていなかった”から。
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