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また今日も、
嘘を吐いてしまった。
赤い赤い嘘。
そう、血のように赤い「真っ赤な嘘」だ。
「……加奈ちゃん、来年には新しい恋が始まっていますよ」
「えー、ホント?」
「はい、本当です……ほら、カードが暗示しているのは……」
僕は、占いを仕事にしている。
「あれ?“ラバーズ”が逆位置ですけど」
「はは……これはね、“実現する未来”を現すんです。……由梨ちゃん、タロットに詳しいね。でも、僕は正統派とは違う方法を勉強しててね」
「ふーん……」
嘘だ。
僕は、タロットなんて、
占いなんて、
“出来ない”んだ。
「来年の……水着になる季節には、別れた元カレ以上の恋人が、出来るよ」
目の前に赤いレースカーテンが降りたような感じがする。
「良かったね、加奈。来年には恋人出来るって」
「うん……ありがとう由梨」
僕の占いブースにやってきたOL2人組。
“失恋した友人、加奈に、いつ新しい恋人ができる”かを占ってもらいにきた彼女たちは、相談料30分6千円を払って出て行った。
失恋した加奈ちゃんより、付き添いで来た由梨ちゃんの方が喋っていた。
まあ、女子2人組だとだいたいそんなものだ。
2人して延々と喋られるかより、まだいい。
「てか、あの占い師ヤバくない?」
これ見よがしに声が聞こえる。
マズい。
嘘がバレたか?
由梨って子、タロットに詳しかったしな。
「うん……カッコイイ……かも」
「でしょでしょ?みんなあの占い師ヤバいって……」
声が離れていく。
僕はホッとして、そしてにやけた。
立ち去る2人の言葉に、“色は付いていなかった”から。
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