声を、私に聴かせて

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「オカルトなんて、信じてないんじゃなかったっけ?」 アオネが皮肉まじりに言った。 「幽霊とか精神世界なんて、今でも信じてないけど……」 「信念を揺さぶられる現象に遭った、と?」 アオネの言葉に、私は頷いた。 アオネは大学時代の知り合いで、今はオカルト雑誌の記者をしている。 やはり餅は餅屋で、私は自身に起きた不可解な現象を話した。 「前に録音した音声の二重録音では?」 「いいえ、新品のテープで録音したけど『声』は録音されていた」 「それは電子音声現象(EVP)と呼ばれている現象だね。 死者の声がテープに録音されたり、テレビや電話から聴こえる現象。 インストゥルメンタル・トランスコミュニケーション(ITC)として研究されていて、エジソンも研究していたそうだよ」 「私のテープも、死んだ母の『声』なの?」 「それを確かめに、これからある場所に行くよ」 アオネに連れて行かれたのは、個人スタジオだった。 「そのテープの音声を解析してもらうの」 アオネはそう言って、スタッフにテープを渡した。 「また胡散臭いネタですか?」 スタッフが半笑いで言った。どうやら知り合いらしい。
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