声を、私に聴かせて

5/10
前へ
/10ページ
次へ
テープを再生して、モニターのグラフを見ている。 「面白いですね。まず、冬子さんのお母さんの音声と『声』を比較しました。 結果、『声』はお母さんの声に似て聴こえますが、人間の声帯を通したモノではありません」 「人間じゃない? 幽霊だから当たり前だけど」アオネが答えた。 「そして、この鼻歌が興味深いですね……」 スタッフがそう言ったきり、口を閉ざしてしまった。 「どうしたの?」 「アオネさん、ソルフェジオ周波数って知ってますか?」 「ソルフェジオ周波数?」 「中世のグレゴリオ聖歌に見られる音階の周波数です」 「そういえばこの鼻歌、霊歌に聴こえるね」 「霊歌って、ゴスペルソングのこと?」 アオネの指摘に、私は訊ねた。 「ああ、良い指摘ですね。 知ってますか? 霊歌ってスピリチュアルという意味があることを」 スタッフが薀蓄を語った。アオネと私は顔を見合わせる。 「すいません、調子に乗ってしまった。 この鼻歌に、そのソルフェジオ周波数が使われているのです。 『528Hzのミ』と『741Hzのソ』から構成されていまして、 『528Hz』は愛の周波数と呼ばれているんですよ」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加