流星

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「コブクロ、好きなんですか?」 その声が自分に投げられたものだと、しばらく気がつかなかった。 数秒おいて左側を見たら、背の高い大学生くらいの男の子が、隣のカウンターの前で私ににっこりと笑った。 「今日も、この前もコブクロだった」 「あの……」 あなた、誰?と言おうとしたら 「チーズバーガーセットお待たせいたしました!」元気なスタッフの声にさえぎられた。 あ、とそちらを見た彼に、後ろから女の子が勢いよく飛びつく。 「シュウ、おっまたせー!」 「別に待ってない」 彼は私に「また」と言って、にっこりと笑った。そして紙袋を手に取ると、店の入口に向かって歩いていく。 女の子は私をうさんくさそうに振り返って見た。 「誰?あのおばさん」 「っるさいな。お客さんだよ……離れろって」 腕に絡みつく彼女を振り払いながら、彼がそう言うのが聞こえた。 お客さん……。 この街に来て7か月、知り合いはいない。馴染んでもいない。行きつけの店もない。せいぜいこのショッピングモールか、美容室か。 でもコブクロといったら……車? あ、と私は思い出した。 今日はスタンドで洗車をした。たしかあの時にいた、色の白い男の子……?
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