第1話

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  病院の面会時間を待って、マンションを飛び出した。 通り出るとタクシーを捕まえて、早口で行き先を告げる。 往復で一時間。 それぐらいなら、陸にバレずに戻ってこれるはずだ。 きっと、大丈夫。 心の中で、何度も呟いて自分に暗示をかけた。 握り締めた掌は、緊張で汗ばんでいた。 陸の許可なしに空に逢えば、罰をうけるとわかっていたのに。 それでも、わたしはこの衝動を抑えることが出来なかった。 面会の受付時間は午後からだ。 素知らぬふりをして、ナースステーションを通り抜け、奥の個室へ向かう。 中の様子を伺うように、そっと病室のドアを開けた。
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