第1話

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     「……空」 ベッドに横たわる姿は、前回と変わりないように思えた。 それが良いのか悪いのか、わたしにはわからない。 けれど、まだ空が目覚める可能性が十分にあるように思えて、冷たい空の手を握りながら、わたしはホッと胸を撫で下ろしていた。 陸が言った言葉は、ただわたしを傷つけるためだけで、本心じゃないのだろう。 そう思えば、少し気持ちも落ち着くような気がした。 願いを込めて、空の手の甲にキスをする。 「空、早く目覚めて……」 そして、わたしを抱きしめて「大丈夫だよ」と言って欲しい。 空のその一言で、わたしは何があっても頑張れると思うから。 それが、叶わなくても。 せめて、元気な姿を取り戻して欲しい。
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