第1話

36/37
前へ
/37ページ
次へ
   そうよ、これは何かの間違いよ。 もしかすると、空のホクロは消えてしまったのかもしれない。 陸がわたしの優しい恋人の空と同一人物のわけがない。 そう思い込もうと、何度も自分に言い聞かせた。 それなのに。 わたしの身体は寒くも無いのに、ガタガタと震えがきて動けなくなってしまった。 検温にきた看護師に見つかって、病室から追い出されるまでの間、わたしは言葉もなく自分自身を支えるように抱きしめていた。 重たい足を引き摺るようにしてマンションに戻った。 躊躇いながら、そっと玄関を開ける。 陸の靴が無いことを確認すると、ホッと安堵の息を吐いた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4667人が本棚に入れています
本棚に追加