第1話

8/37

4667人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
     「……そ…ら?」 見上げた先の茶色の瞳が、僅かに揺れたような気がした。 「俺は陸。 酷いな、友香は。俺と空の違いもわからないなんて」 「お願い、空に逢わせて」 「無理だと、何度も言ってるだろう」 冷たく切り捨てられた言葉を無視して、あたしは譫言(うわごと)のように空の名前を呼び続けた。 「空に、逢わせて。 空、どこにいるの?……空っ」 パシッ、パシッ 破裂音のあと、両頬が熱をもつ。 「黙って、抱かれてろ」 「……っ」 怒気が込められた低い声に身体が震えた。 殺してと言いつつ、わたしは死ぬのが怖いのかもしれない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4667人が本棚に入れています
本棚に追加