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「……そ…ら?」
見上げた先の茶色の瞳が、僅かに揺れたような気がした。
「俺は陸。
酷いな、友香は。俺と空の違いもわからないなんて」
「お願い、空に逢わせて」
「無理だと、何度も言ってるだろう」
冷たく切り捨てられた言葉を無視して、あたしは譫言(うわごと)のように空の名前を呼び続けた。
「空に、逢わせて。
空、どこにいるの?……空っ」
パシッ、パシッ
破裂音のあと、両頬が熱をもつ。
「黙って、抱かれてろ」
「……っ」
怒気が込められた低い声に身体が震えた。
殺してと言いつつ、わたしは死ぬのが怖いのかもしれない。
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