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「そういえば、クロウってなんで魔法基礎訓練の授業取ってないの? 魔法不得意じゃん」
「それは――」
そう責められても彼女にはそれを取らない理由を持っていた。だからごまかすように口籠ってしまう。そんな彼女を助けるようにアロウが会話に割り込んでくる。
「そんなことしたら、私とクロウが離れ離れになっちゃうじゃないの」
アロウがそういうと、納得したようにクラインは頷いた。
「そういうことか」
「勝手に納得しないでよ」
「まあ、それ以上クロウが強くなったら困るからな」
ふと、告げられる言葉に一瞬きょとんとするクロウ。彼女にその真意は最後まで分からなかった。
「これ以上、私の妹を誘惑しないでくれる?」
「いやいや、敵は何も俺だけじゃないぜ」
妙な対抗心をあげているが、何を奪い合っているのかクロウにはわからなかった。おもやそれが自分だっていうことに気づくのは当分先に(むしろ気づくのだろうか?)なると思うだろう。
「誰の話をしているの?」
「クロウにはあまり関係ねえ話だよ」
「まだまだクロウには早いのよ」
何が早いのだろうか、と、少し考えるも深く考えるのが面倒になったのは、そうなんだーと返答して考える事を放棄した。
彼女たちがクラスの中心で楽しく雑談している中、隅ではそれを好ましく思わない連中もいる。非リア充と呼ばれるその連中は、努力を放棄し、他人を疎むだけの存在だ。
彼らに対し、羨み、憎み、しかし、それを得ようとはしない。彼らはそんな自分を卑下して劣等感を他人の不幸で自悦感に変えようと常に周りを見る。
基本的に一人ぼっちであるが集団になると威力を発揮するその力は現在では大変な問題になっている。しかし、惜しくもこのクラスでそこまで発展することはない。クロウやアロウ以外にも女子はいるし、彼女らは基本的に男子と会話をする。
クラスイベントの交流会がもうすぐあるのだから男子と交流していなければ交流会で壁に花を刻むことになる。そんな惨めな事にならないよう彼女たちは努力し、彼らはそれを待つただの臆病者なのだ。
「それより、クロウは来週の交流会は誰と出るんだ?」
男子諸君が気になることをこいつは平然と聞く。
クロウの中身は子供っぽくて馬鹿であってもその外面は誰もが憧れる華である。男子にとっては中身も華のある女子がいいが、高見を見ることもそのまた夢である。
つまり、外見で一番可愛いのがクロウなのだ。
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