日常に紛れる非日常

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アロウも可愛いのだが、中身が怖すぎる。 誰もが、アロウは妹であるクロウに溺愛するぞっこんのシスコンだと知っている。彼女を誘惑すれば、下手すると首が飛ぶ。 それでも妹の方に手を出せば死を意味するのだが、妹は無邪気に交際を受けるので、死ぬならば一度でも幸福の蜜を吸ってから死にたいという男子の意思でもある。 「そうだね、クライン――」 「クロウは私と出るからね」 急に声をさえぎるアロウ。その先が気になったが、周りの男子は姉の言葉によって絶望にたたき落とされた。 「いやいや、女の子どうしは無理だろ」 「私、男装するもん。カッコイイ女子ランキング一位だったから学園長から男装の許可おりたし、男枠ならクロウも奪えるし」 なんだと、という顔をしつつも、いつの間にそんなランキングがついていたんだ、という疑問も起こる。 「男子もやったんじゃないの?」 そういえば、先日に可愛い女子の投票があった事を思い出す。つまりあれに併用して女子ではカッコイイ女子の投票が―― 「あ? カッコイイ男子投票もあったんじゃねえの?」 「あったけど、学園長に呼ばれていないんだったら君は一位ではなかったんでしょうね」 その言葉によってクラインの心は砕け散った。 「この俺が一位じゃないだと」 「やーい、このナルシスト、自慢男、キングオブナルシスト!!」 ぐさりと、刺さる矢を感じる。それもアロウではなく、クロウに言われるともっと傷つく。 「そ、それより、クウェルフト姉妹はその、カッコイイ男子は誰に投票したんだ?」 「そんなこと聞くなんて余裕ないのね」 「にゃははは」 「……ノーコメで」 ナルシストなクラインは彼女たちが誰に投票したのか気になる。また、投票された男子を殺したいほど妬む。羨ましい。馬鹿だけど可愛いクロウやクールで凛としているアロウにカッコイイと言われる男子が妬ましい。自分と変わってくれ。それはクラス内の男子が全員感じることだ。ここまで彼女に話しかけているのだからせめて自分でなければ他のクラスであってほしい。そう思って彼女たちの答えを聞く。 「私は、クラインに投票したけど」 「私もクラインに入れたよ?」 は? こいつら何を言った? 「聞き間違いか? 俺に投票したって?」 「だって、私たちまだ一年生だからこのクラスしか知らないじゃないの。で、普段から話しかけてきて名前覚えている男子なんてクラインしかいないわよ」
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