日常に紛れる非日常

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消去法よ、消去法。と彼女は連呼する。 しかし、クラインは単純にうれしかったのかもしれない。顔が少しにやけているのがその証拠である。 「は、俺も人気が……ちょっとまて、消去法?」 そして、喜びの後にやってくる真実。彼女たちは男子の名前などクライン以外覚えていないのだ。 そもそも、男子が自己紹介をして以来、授業で活発に発表するのはクラインと女子だ。他の男子は引きこもっている。むしろ彼らの名前を覚えることの方が困難だ。 故にこのクラスの男子は暗い。 「このクラスって、なんだかんだで女子の方が強いからね」 正論――よりも、草食系男子と肉食系女子の多いクラスで、有名なBクラス。 学年には五クラス……S、H、B、N、Eの五クラスだ。何故こんな無意味なクラス(最初に何故、順番ではないのかと疑問に思うくらい)分けなのだろうと感じたが、今は慣れた。 「まあ、クラス編成の分け方は今は関係なくて、来年度からその意味がわかるんでしょ」 クラス分けに関して、一年生は平等で二年からその意味を発揮するらしい。 「でも、俺はカッコイイランキング一位じゃないんだ」 「まだひきづってんの」 「だって、交流会で表彰されるんだぜ」 「そして、男子諸君を全員敵に回すイベントだな」 「……」 クラインの顔が青ざめていく。 「女子の場合、カッコイイのは男子の反感を買うし、可愛いのは女子の嫉妬心を喘ぐが、まだ男子の可愛いランキングと男子のカッコイイランキングは格別だろ、あ、ついでにいっとくが私たちは可愛い方にもクラインを入れたからね」 本当に男子の名前を覚えていないんだとこの時はっきりと自覚した。 俺の何処が可愛いんだと、心の中で叫んだ(心の叫び)。 「それよりも、クラインはどうするんだ? どうせ私たちのどちらかと出るつもりだったんだろ」 「……そうだけど、まあ他にあてがないわけではない」 しかし、彼の表情は暗くなる一方だ。 「このクラスでは一番明るい男子なんだ、誘えば喜ぶんじゃないのか?」 「そう簡単な話しではないのだよ、幼女よ」 「殺してほしいのか?」 「冗談です」 とっさに冗談トークでそのひそやかな胸を例えて幼女と呼んでみたが、危うく三途の河を越えるところだった。 というか、アロウは多分、胸もない点と男らしさがカッコイイポイントになっているんだと思う。だがそのシスコンは直した方がいいと思うぞ。
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