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「カッコイイね」
「そうね、殺したいくらい。なんでクロウの視線を奪うのかしら?」
「お姉ちゃん怖いよ、むしろその死神装束が似合うくらい怖いよ」
すでに周りでは死神アロウと呼ばれるくらい怒りに満ちた彼女がここにいた。背後で失神しそうな担任がいたのは気のせいだと思いたい。
しかし、ロスターという男は聞いたことが無いが、グラディアスは先ほどのロズワルトお嬢様に続く第二貴族だ。有名な奴なんだろうと彼女は思っていた。
「では、女子の部門に移ります――――アロウ・クウェルフト・シンシア」
死神装束のまま彼女は壇上に上がった。すでに女子の目を輝きに変え、男子から恐怖される様を眺めながら壇上に登り彼らを見下ろす。
いい気味だ、そして思い知れ、妹に手を出した奴は死を見せてやる。
「君、なかなか迫力あるね」
「どうも、貴方こそ、私知りませんでしたよ、存在を」
「それは、そうだろう、君みたいな編入組が知っているわけがない。ただ調子に乗るのは今日限りだ――」
隣の男子、つまりロスターに挑発される。
今は表彰の場なので無視したが後でお仕置きすることを考えた。
「最後に――――クロウ・クウェルフト・マヤ」
クロウは呼ばれてから少し急ぎ目でこ走りしながら壇上に向かう。その姿は男子も女子も虜にする可愛さだが、ここで事件がおきる。
「お、わっ」
壇上の階段に躓いてこけてしまう。バタンと少し大きめの音を立てて頭をぶつける彼女。心配して駆け寄るアロウより早く、ロスターが動いた。
「大丈夫ですか?」
「……へ? 大丈夫だよ」
しかし、彼女の額からは少しだけ血がでていた。多分、角にぶつけてしまったのだろう。
「しかし、血がでて―――」
いますよ、と続けるつもりだった彼の声を遮るように誰かの声が聞こえた。それが女性の声だと気づくのに数分かかったのだが。
「妹に触るな、下種が」
いきなり、アロウが彼の前に立ち憚る。会場愚かロスターすら何が起こっているのかわからない。妹を守るように抱きかかえたアロウはすぐさまロスターから下がった。そして妹の状態を心配する。その姿はまるで狂惑な狼からか弱い羊を守るような光景と似ていた。
手を差し伸べた状態で固まるロスター。そして空気が凍ったようにシーンとなる会場。
ああ、やっちゃったな、とため息を漏らすクライン。
「下種? この俺を下種と呼んだのは誰だ?」
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