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死神の死は輪廻の輪にすら入れない死だと、この世界では伝えられている。
彼女が本当に死神ならば、彼女に喧嘩を売ることは、地獄へ連れて行かれることと同意議である。
「何故、死神がこんなところにいるんだ」
それは、誰もが疑問に感じることだ。
一年生の間はまだ力の制御はできない。故に使い魔召喚は行わない。彼女の――クロウの使い魔ならいつ召喚したのかわからない。
使い魔召喚で使われる儀式陣はギルドか軍が管理している。使われたのならば使われた形跡が残るが、ここまで幼い少女が使った形跡はここ最近は見ていない。
ならば、彼女たちはオリジナルの召喚陣を持っているということになる。
それは、ある意味驚異である。
人間の知らないところで、秘匿の使い魔が召喚される。
そもそも使い魔を持つことができるのは人間の特権だ。
魔族の中に使い魔を持っている者はいない。
精霊や獣人の中でも聞いたことはない――というよりも彼らは持つ理由はあまりない。
力の少ない弱者の特権であり、強者に含まれる精霊が使い魔など召喚した日には世界のバランスが崩れてしまう。
そんな理由で彼女が使い魔を召喚したことが今の空気を作っていた。
「まあ、私が死神を召喚したことは後で――テログループを倒してから考えてください」
「テロフループ討伐のほうが重要だと考えるのか? それよりも魔族が使い魔召喚を行った方が重要だと思われるのだが」
王のその意見は最もだ。
彼らはテログループの驚異を知らない。そんなことで世界が滅ぶなんて考えてもいないのだからだ。
「そんなことはどうでもいいのです、そもそも私が使い魔を召喚したっていっても、私は魔族との関係は既にありませんし、私は今、人間側の味方です」
「ああ、それは――」
それは、わかっている?
いや、それすらわからないだろ、ここまで何もわからない少女がなぜ軍の裏舞台の指揮官などをしているのかすら疑問に感じる。
「王よ、一つ聞きたい、なぜ彼女が――」
「それは、既に彼女らが、我が娘の友人であり命の恩人であるからだ――私は彼女らがどんな種族であろうと信頼はしているつもりだ」
王族の娘の命の恩人だと――彼は言ったのだ。
「王、それはどういう意味ですか」
「今は話すべきことではない、だが彼女が敵ではなということがわかっただろう」
周りが静かになる。
「本題に戻ろう、なんだったかな?」
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