始まりはいつも突然やってくる

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「だって、眠いもん、先生の話つまんないし、そりゃ我慢してるけど……」 「夜とか何してるの?」 「普通に寝ていますよ、まあ、子供みたいな時間帯に寝ているわけではありませんが」 それでも一般的な時間帯に寝ていますから、睡眠時間が足りてないわけではないと思いますが、とアロウは答える。 「アロウ姉も大変だな」 「そうね――」 その夜、彼女たちは同室の寮にいる。 一応、双子であり姉妹である彼女たちを考慮して学園側から配慮されているのだ。 ルームシアはこの学園では珍しくない。仲のいい友人たちはルームシアしているのだから、彼女らがこんなことをしても変に思うことはない。 しかし、彼女らには秘密があった。 「お姉ちゃん、早く寝ないと明日も居眠りしちゃうよ」 「そんなこと言わないの、それに別に授業なんて面白くなければ寝ればいいのよ」 「いや、だから、それで今日説教食らったんだけど」 担任の説教がこうも続くとそろそろ改心しなければと感じ始める妹を洗脳するように姉は語る。 「別に授業なんて聞かなくても死にはしないわよ、それにあの担任め、私の可愛い妹の眉間に魔法魂なんてあてやがって、傷が残ったらどうするのよ!!」 「お姉ちゃんのそれ、異常だよ」 「何言っているのよ、可愛い妹を愛でる姉のどこが異常よ、こんなの世間一般よ!!」 それを世間一般にはシスコンというのだが、アロウはそれを否定する。 愛情もここまでくればコンプレックスになっていいと思うのだが、彼女が否定するのだから彼女はシスコンではないのかもしれない。 以前、だれかが、クロウはツンデレだよね、と、噂していたが、クロウがそれを否定したためにその後その噂は広がらなかった。影で誰かが、噂をしていた人間をお仕置きしたとも聞くがすでに終わったことで確認することすらできない。 「それは、世間一般ではないと思うの」 「お姉ちゃんに逆らうとはいい度胸ね、マヤ」 マヤ――と呼ばれるクロウ。 この世界では名前に意味が存在する。普段の日常でクロウ・クウェルフト・マヤはクロウと呼ばれるのは、他人に呼ばれる名前の名称がクロウだからだ。基本的に名前の構成は、他人が呼称する名前、次に家族を纏める家族名、そして最後に親しい友人や家族間で呼ばれる幼名である。故に二人っきりの時は幼名を呼び合う。
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