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僕は彼女が好きだけど僕みたいな余所者(よそもの)に、京都の名家を継げる気がしない…
僕は…彼女を幸せにする自信はあるけど僕は幸せになれるかな…婿だから苛められないかな…
どう思う…?
教えてくれないか土方君―…
…そう相談された日の事を思い出す。
知るか!
っつってやったが。
「あのマリッジブルーは一体…何だったんでしょうね?」
『知るか』
婿入りしても新堀家を実質的に継ぐのは当然嫁の松湖さんだと…テメェは只の入り婿、役職も家柄も只のそれなりの癖に…と親類筋に言われたらしく。
そっか~と気持ち悪ぃマリッジブルーから抜けた男が能天気になった日の事も、思い出した。
それが既に苛めだとは教えず。
マジで知るかッ!
マジで面倒臭ぇ!
「そして。桂さんは晴れて松湖さんの旦那さんに…つまりは。リアさんのお義兄さんにもなられた訳ですが」
「結婚式ではどちらが花嫁か…私には良く分からなかった」
壱の言う通り、事あらば泣いて花嫁さんに涙を拭われ…
失笑と苦笑と爆笑…ありとあらゆる笑いを誘った男はそれでも
「幸せそうな顔で…松湖さんとリアさんに涙を拭われてましたよね。あの時、実は私…司令長にケツバットしたかったです」
「奇遇だな惣。私もだ」
『あのニヤけ顔見てケツバットで済みそうなお前らはぬるい』
「アハハッ!」
「ふ…披露宴の二次会ではその鬱憤を少しは晴らせました」
『栄志が作った悪意あり過ぎの写真集とDVDの事か?』
「いいえ。それより隼人さんが司令長になさった事の方が…。私は腹が捩れるかと思いました…流石です。衝撃的でした」
『…俺はお前が腹ぁ捩れるまで笑ってるとこ見逃した事の方が衝撃的だぜ…』
「え…」
「アハ!私も笑い転げて壱君のそれは見そびれちゃいました」
「…別に見ずとも良い」
フイッと、顔を背ける壱もまた珍しく…つい苦笑しちまった。
「…あれからもうすぐ1年経つんですねぇ…」
『そう…だな』
「司令長は相変わらずリアさんを凄い溺愛っぷりです。本当の兄妹になれて嬉しいんでしょうかね?」
『…そいつぁ関係ねぇだろ』
「はい…松湖さんと付き合ってた時間も長いですし…必然的にリアさんと司令長も仲良しさんに―」
『時間なんざ関係ねぇだろ』
「…ですね」
桂…じゃねぇ
新堀小五郎消防司令長の嫁さんになった奇特な女の…妹。
それが…隣に座る新堀リアだ。
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