月見酒 1

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左隣に座っていた栄志にグラスを渡され受け取る。 「隼人さんはやっぱりハイパー入りしたいんですか?」 「あ!それ聞いちゃうんですか…ずっと聞くの我慢してたのに栄志ったら狡いです」 「狡くないよ」 空だったグラスに右隣から惣がビールを注いできた。 『…ハイパー、か』 特別高度救助隊。 ハイパーレスキュー隊っつった方が耳に馴染みがあるだろう。 東京消防庁が本家で有名だが、政令指定都市にも特高救助は… 「京都市消防局にも…本部指揮救助隊があるでしょ?スーパーなんちゃらが」 『スーパーコマンドレスキューチームだ』 「うわ、詳しい。やっぱり行く気ですか?」 『…馬鹿野郎。レスキューなら知ってて当然だろうが』 栄志の頭を軽く叩けばクスクスと笑う。 呆れ、ビールを飲もうと― 「隼人さんが行くなら私も行きます!」 『…は?』 口にグラスが当たる間際、惣に止められちまった。 正確にはその声に。 「あ、駄目だよ。俺がハイパー行くから惣に入る余地は無い」 「何でですか!栄志より私のが体力あるんですよ!?栄志にこそ入る余地はありませんよ!」 「私もハイパー目指します」 『壱、多分お前が一番向いてるかもな』 「「えッ」」 「…」 ギョッと、机を挟んで前に座る壱を見た餓鬼二人にまた呆れ…るよりも。 嬉しそうにうっすら頬を染め、突き出しのポテサラを箸でつつく壱に… 俺の顔は苦虫を噛み潰す。 「…色モン」 『五月蝿ぇ』 「イガッ」 机にある永倉の頭を手刀で叩き潰し、まだ呑んでねぇグラスを置いた。 『…ハイパーから声が掛かりゃ考えるが、俺は下っ端いたぶってやんのが好きだからよ』 「「「うッ」」」 ニヤ…と笑やぁ引き釣る餓鬼共を見渡し。 『テメェらが一人前になるまで目ぇ離せやしねぇんだよ俺は』 「ッ隼人さぁんグェッ」 『させるかよ』 ガッと惣の首を片手で掴み抱き付きを阻止した。 「…名声に興味無いんですか?土方消防司令補?」 『無ぇな。吉田消防副士長』 互いの階級を呼び合い、ニヤリと笑う。 「ハイパーレスキューでも現場で戦えるのに。しかも消防士…エリート中のエリートですよ?あなたなら―」 『俺がエリートって色かよ』 「アハハ!色モン束ねてる方が似合いですけど?」 『フッ…テメェが言うな』
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