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左隣に座っていた栄志にグラスを渡され受け取る。
「隼人さんはやっぱりハイパー入りしたいんですか?」
「あ!それ聞いちゃうんですか…ずっと聞くの我慢してたのに栄志ったら狡いです」
「狡くないよ」
空だったグラスに右隣から惣がビールを注いできた。
『…ハイパー、か』
特別高度救助隊。
ハイパーレスキュー隊っつった方が耳に馴染みがあるだろう。
東京消防庁が本家で有名だが、政令指定都市にも特高救助は…
「京都市消防局にも…本部指揮救助隊があるでしょ?スーパーなんちゃらが」
『スーパーコマンドレスキューチームだ』
「うわ、詳しい。やっぱり行く気ですか?」
『…馬鹿野郎。レスキューなら知ってて当然だろうが』
栄志の頭を軽く叩けばクスクスと笑う。
呆れ、ビールを飲もうと―
「隼人さんが行くなら私も行きます!」
『…は?』
口にグラスが当たる間際、惣に止められちまった。
正確にはその声に。
「あ、駄目だよ。俺がハイパー行くから惣に入る余地は無い」
「何でですか!栄志より私のが体力あるんですよ!?栄志にこそ入る余地はありませんよ!」
「私もハイパー目指します」
『壱、多分お前が一番向いてるかもな』
「「えッ」」
「…」
ギョッと、机を挟んで前に座る壱を見た餓鬼二人にまた呆れ…るよりも。
嬉しそうにうっすら頬を染め、突き出しのポテサラを箸でつつく壱に…
俺の顔は苦虫を噛み潰す。
「…色モン」
『五月蝿ぇ』
「イガッ」
机にある永倉の頭を手刀で叩き潰し、まだ呑んでねぇグラスを置いた。
『…ハイパーから声が掛かりゃ考えるが、俺は下っ端いたぶってやんのが好きだからよ』
「「「うッ」」」
ニヤ…と笑やぁ引き釣る餓鬼共を見渡し。
『テメェらが一人前になるまで目ぇ離せやしねぇんだよ俺は』
「ッ隼人さぁんグェッ」
『させるかよ』
ガッと惣の首を片手で掴み抱き付きを阻止した。
「…名声に興味無いんですか?土方消防司令補?」
『無ぇな。吉田消防副士長』
互いの階級を呼び合い、ニヤリと笑う。
「ハイパーレスキューでも現場で戦えるのに。しかも消防士…エリート中のエリートですよ?あなたなら―」
『俺がエリートって色かよ』
「アハハ!色モン束ねてる方が似合いですけど?」
『フッ…テメェが言うな』
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