【欲しいから、欲しくない】

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  「んー……」  もぞ、とさらさらのシーツの中で身じろぎした。  目が覚めた瞬間、五感は実によく働いてくれる。  シーツのさらさら感を味わってるってことは、何も着ないで寝てたってことだ。  何も着ないで寝てたってことは、ここは、あたしの部屋じゃない。 「まだ早いよ、芹香。寝てて……」  くぐもった低い声が聴こえて、ああやっぱり、と思った。  こうして彼の声を至近距離で聴くことにも、慣れつつある。  どうしようかな、と思っていると、シーツごとぐいと抱き寄せられた。 「おはよ」 「おはよ……おやすみ……」  言いながら、彼はあからさまに眠りに落ちていく。 .
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