***エピローグ*** 須藤 湊人

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彼女が目を開ける前に、 細い腕を取り、薬指にリングを通す。 サイズはもちろんぴったりで。 キラキラ輝くダイヤが冴子の白い肌によく似合う。 「冴子……?」 囁くと目の前の彼女は「んん、……」と一度眉間に皺を寄せてから、ゆっくりと目を開けた。 トロンとした瞳はだんだんと焦点が合ってきて、俺と視線が交差する。 「ん……おはよ? 早いね?」 そんな彼女のおでこにチュッと唇を寄せた。 高鳴る心臓の音が彼女に聞こえているのでは、と心配になりながらも口を開く。 「……これから、ずっとずっと。 冴子と、新しい朝を迎えたい。 冴子じゃなきゃダメなんだ。 ……結婚しよう。」 「……え……?」 目をこすろうとした彼女はやっと薬指の違和感に気付いた。 大きな瞳がうるっと揺れて、 次の瞬間には満面の笑顔が咲いた。 「はい!!」 彼女は細い腕を伸ばして俺の首に巻き付ける。 ぎゅーっと彼女の温もりを感じて俺は目を閉じる。 彼女の甘みを伴う香りを胸一杯に吸い込んで噛みしめる。 ずっと。 ずっとずっと。 こんな風に幸せな朝を迎えたい。 そう思った矢先、ズルリと彼女の腕がほどけた。 ん? 慌てて彼女の顔を確認すると、そここから聞こえるのはまたしても 「スピー……スピー……」 と間抜けな寝息。
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